グラム陰性通性嫌気性菌

腸内細菌科

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セラチア

ビブリオ科

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百日咳菌

ブルセラ

バルトネラ

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口腔細菌

口腔細菌(アクチノマイセス)

口腔細菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)

ミュータンスレンサ球菌

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グラム陰性好気性桿菌

コクシエラCoxiella

1935年、オーストラリアの屠畜場で原因不明の熱病の集団発生が起こりました。この熱病は、Q熱 (Query fever) と名付けられ、原因病原体が分離されましたが、これは、同年アメリカにおいてダニから分離された新しい病原体と同一でした。この病原体は、その命名に、紆余曲折がありましたが、研究に携わったCox博士とBurnet博士にちなんで、コクシエラ・バーネッティイ(Coxiella burnetii)となりました。現在、本菌は、世界全域に渡って分布することが明らかとなっており、Q熱の症例も世界中ほぼ全ての国から報告がなされています。本邦では、1988年に、カナダでヒツジの胎児を扱う研究に従事していた留学生が、帰国後に発症し、国内初のQ熱症例として報告されました。これ以降、国内での調査・研究が進み、我が国においてもQ熱が存在することが明らかとなっています。Q熱は、感染症法における4類感染症で、全数報告対象となっており、毎年数十件が報告され、増加傾向にあります。

コクシエラ・バーネッティイは、ウシ、ヒツジ、ヤギなどの家畜、イヌ、ネコなどのペット、ハト、カラスなどの野鳥等多くの動物が保菌しており、これら保菌生物の周囲にある排泄物・分泌物をエアロゾルとして吸入することが、ヒトへの主要な感染経路です。未滅菌の乳製品・肉類の摂取による経口感染、また、ダニなどの節足動物も保菌していることから、それらの咬傷による経皮感染の場合もあります。

Q熱は、コクシエラ・バーネッティイに暴露を受けた約半数の人が急性に発症し、残りの半数は無症状に経過します。急性型のQ熱は、発熱、悪感、倦怠感、頭痛、筋肉痛等のインフルエンザ様症状の他に、肺炎、肝炎、髄膜炎など、多彩な病型を示します。また、その数%が、心内膜炎を主徴とする慢性型に移行することがあります。

治療には、テトラサイクリン、マクロライド、キノロン系抗生物質が有効です。ただ、慢性型Q熱の場合、長期間の投薬治療が必要であり、十分に効果が得られない場合も少なくありません。

三宅 正紀(静岡県立大学薬学部)