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グラム陰性好気性桿菌

バルトネラBartonella

ヒトの感染症としてバルトネラ(Bartonella)はバルトネラ・クインタナ(B. quintana)とバルトネラ・ヘンセレ(B. henselae)が重要で、前者は塹壕(ざんごう)熱、後者は猫ひっかき病の原因菌として知られています。わが国では過去に数例のバルトネラ・クインタナによる心内膜炎患者例の報告があります。一方、バルトネラ・ヘンセレによる猫ひっかき病は年間その患者数は約10,000人とも推定され、人獣共通感染症として重要です。ここでは猫ひっかき病(バルトネラ・ヘンセレ感染症)について述べます。

猫ひっかき病はネコとの接触のみならず、ノミやイヌからも感染し、ノミは重要なベクターです。本症は局所リンパ節腫脹と発熱を主訴とする定型例からリンパ節腫脹を認めない全身性の重症な非定型例(不明熱、視神経網膜炎、肝・脾肉芽種、急性脳症、心内膜炎など)までその臨床像は多彩です。HIV感染などの免疫不全患者では細菌性血管腫や肝臓紫斑病を惹起します。猫ひっかき病は温暖な地域ほどその発症例が多く、わが国においても西日本に多い傾向があります。また、ノミの繁殖と関連して秋から冬にかけて多く発症します。患者は成人より小児に多く認められ、ネコ・イヌとの接触歴があり、リンパ節腫脹や不明熱のみられる患者では本症の除外診断が重要です。

バルトネラ・ヘンセレはグラム陰性桿菌でチョコレート寒天培地(炭酸ガス培養)に発育可能ですが、約2週間の培養日数を要し、臨床材料からの検出は容易ではありません。そのため、診断には患者の血清バルトネラ抗体価を測定する血清学的検査やバルトネラ特異DNAを検出する遺伝子増幅検査が行われています。近年、その診断法の開発により、わが国での本症の実態が明らかになりつつあります。

昨今のペットブームの中、バルトネラ・ヘンセレによる感染症、猫ひっかき病の存在を今後一層認識する必要があるだろう。

柳原 正志(山口大学医学部)

バルトネラ・ヘンセレのグラム染色像。
やや湾曲したグラム陰性桿菌で、新鮮分離株では自然凝集性が強い。