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口腔細菌

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口腔細菌

口腔細菌(アクチノマイセス Actinomyces

アクチノマイセス(アクチノミセスと呼ぶこともあります)は細菌の仲間で、口腔が主な生息部位ですが、扁桃腺の陰窩と呼ばれるひだの奥や、膣にも存在します。歯磨きを怠けると、歯の表面に細菌と細菌の産生物からなる歯垢(プラーク:plaque, 図1)が形成されますが、アクチノマイセスは、歯垢中の細菌の10~20%を占めます。グラム染色を施すと青色に染まる細長い細菌で(グラム陽性桿菌)、幅が約1μmの糸状に発育し、V、Y、T字状の多形性を示します(図2、3)。真菌(カビ)とよく似た増殖形態をとるので、一時は真菌の仲間と考えられた時期もありましたが、原核生物で真正細菌(Bacteriaに属します。

口腔アクチノマイセスの発育条件は、種によって通性嫌気性から嫌気性まで様々で、二酸化炭素の存在下の方が良く発育するものもあります。アクチノマイセス・ネスランディ(A. naeslundii)、オドントリティカス(A. odontolyticus)、オリス(A. oris)などは、歯ブラシをしてきれいになった歯の表面に最初に定着する、いわゆる初期付着細菌として注目されています。歯垢中でアクチノマイセスが増えると、すべてではありませんが、歯と歯ぐきの境目や、奥歯の噛み合わせの面に虫歯(う蝕)を作ったり(図4)、歯肉炎という歯ぐきの炎症の原因になります。アクチノマイセス・イスラエリィ(A. israelli)は酸素があると発育できない嫌気性細菌で、時に顎放線菌症という重篤な感染症を引き起します。

アクチノマイセスは口腔常在細菌の主構成菌で、比率的には、歯周炎(歯槽膿漏)にかかっていない健康なヒトの口に多く、歯周炎患者さんでは減少することから、口の中の健康状態を見る目安になるのではないかと考えられています。硝酸還元能をもち、亜硝酸を私たちの体に供給することで、心・血管系の病気や高血圧を防ぐ働きをしてくれている可能性があり、注目されています(図5)。時に日和見感染内因感染といった困った問題を引起しますが、我々とともに暮らす常在細菌としては、善玉の一面も持っています。

落合 邦康(日本大学歯学部)
山中 武志(大阪歯科大学)
真下 千穂(大阪歯科大学)
南部 隆之(大阪歯科大学)

図1 歯に付着した歯垢(プラーク)
図2 アクチノマイセス・ネスランディのグラム染色像
図3 アクチノマイセス・オリスの走査電子顕微鏡像(bar=2μm)
図4 歯と歯ぐきの境目あたりに出来たう蝕(虫歯)
図5 口腔アクチノマイセスの硝酸還元能と
心・血管疾患との関係
真正細菌(bacteria)
生物分類における1ドメイン(他は真核生物ドメインと古細菌ドメイン)。アクチノマイセスの分類上の位置づけは、細菌ドメイン(Bacteria)、アクチノバクテリア門 (Actinobacteria)、アクチノバクテリア綱(Actinobacteria)、アクチノマイセス目(Actinomycetales)、アクチノマイセス科(Actinomycetaceae)のアクチノマイセス属(Actinomyces)となります。
口腔アクチノマイセス
アクチノマイセス属には30菌種以上が存在しますが、口腔から分離される主なものはA. naeslundiiA. odontolyticusA. orisA. johnsoniiA. dentalis、A. graevenitzii、A. georgiaeなどで、A. israelliA. gerencseriae、A. meyeriは放線菌症の感染病巣からしばしば分離されます。A. bovisはウシ放線菌症の原因細菌、A. viscosusは齧歯類に定着するアクチノマイセスとして知られています。
通性嫌気性細菌
酸素があってもなくても発育できる細菌。
嫌気性細菌
酸素があると発育できない細菌。
顎放線菌症
下あごの奥歯のあたりの骨の中にアクチノマイセスが感染することにより生じ、下あごあたりの頬の腫脹(硬結を伴う)、排膿、膿汁中の菌塊(硫黄顆粒)が特徴的です。アクチノマイセスと近縁の細菌属種によっても同様の疾患が引き起こされることがあります。
ヒトの体にはおよそ1011個の細菌が定着していると言われています。そのうち、主に口腔に定着しているものを口腔常在細菌と呼び、これまでのところ、培養可能な細菌として750菌種程度が知られています。
硝酸還元能
硝酸イオン(NO3-)を亜硝酸イオン(NO2-)へと還元する能力のこと。
日和見感染
普段は病原性を発揮しない弱毒微生物や、常在細菌が宿主の抵抗力が弱った際に起こす感染症のこと。
内因感染
常在微生物によって生じる感染症。口腔では虫歯(う蝕)と歯周病(歯槽膿漏)が良く知られています。