理事長ご挨拶

第55代理事長 堀口安彦(大阪大学微生物病研究所)

この度、神谷茂前理事長の後任として、2015年1月から3年間の任期で理事長を拝命いたしました。まさしく青天霹靂の困惑と、身に余る光栄と身の引き締まる責任を同時に感じております。

17世紀の微生物の発見に端を発する細菌学は、18世紀にパスツールやコッホの手によって基礎科学として確立され、感染症学の礎を築いたばかりでなく、これまでに免疫学やウイルス学、さらには分子生物学などの新学問を生み出す原動力となってきました。近年においても、細菌学上の発見が細胞生物学や生化学の分野において新たな研究領域を提供するきっかけになった例は枚挙にいとまがありません。そのような細菌学の、我が国における発展を担ってきたのが日本細菌学会であると言えます。

本学会は昭和2年に北里柴三郎先生が開催された第1回衛生学微生物学寄生虫学聯合学会を源流に持ち、現代に至るまで未知の病原細菌の同定と発見、あるいは R 因子(耐性プラスミド)の研究や細菌毒素研究などにおいて世界の先端を走ってきました。抗生物質の発見や化学療法の開発が隆盛を極めた時代には、細菌学は不要な学問と考えられて一時は衰退したかに見えましたが、耐性菌の出現などによって再び基礎細菌学が脚光を浴び、今また細胞レベルや分子レベルでの細菌の生態や病原性の研究が著しい発展を見せています。さらに近年では、活動範囲を医科細菌学のみならず、農学・工学・理学等の領域における細菌研究にまで活動を広げ、学問分野に拘わらぬレベルの高い基礎細菌学研究のための、交流や情報交換の場を提供しています。

現在、本学会においては、学術集会の国際化や活性化、財政再建や組織再編などの問題が山積されておりますが、今期の理事会ではこれまでの諸先輩方の活動を引き継ぎ、かつ現在の細菌学の動向を見て、どのような事業や活動が本学会に相応しく、細菌学の発展に効果的であるのかを模索しながら、学会の方向性を舵取りしていきたいと考えております。いい研究をすればそこに人は集まります。本学会には素晴らしい伝統がありますが、残念ながら伝統あるがゆえの硬直化した組織の論理もしばしば垣間見えます。いい細菌学研究ができる土壌を提供するために、伝統やしきたりを含めた全てをもう一度ゼロから考え直す精神で、理事会一同運営方針を決めていく所存です。各方面の会員先生の皆様方には、ご理解とご協力を何とぞ宜しくお願い申し上げます。

第55代理事長 堀口安彦
(大阪大学微生物病研究所)