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クラミジア

肺炎クラミジア
(クラミドフィラ・ニューモニアエ Chlamydophila pneumoniae

肺炎クラミジアは、近年の1980年代に発見された細菌で、その病原性には未知の部分が多くあります。細菌の特徴として菌体は小さく光学顕微鏡では見えず、動物細胞内でのみ増殖します(偏性細胞内寄生微生物と呼ぶ)。感染性の基本小体が宿主細胞に吸着・侵入し、封入体の中で増殖形態である網様体に変化して分裂増殖した後に、再び基本小体に戻り、細胞破壊とともに細胞外に放出され他の細胞に再感染するという特異な生活環を有しています。

かぜの原因微生物のひとつで、市中肺炎の5〜10%の原因となります。心筋梗塞、虚血性心疾患、高血圧と関係する動脈硬化病変部にも高頻度で見つかることから、それらの疾患との関連性が研究されていますが証明されるには至っていません。ぜんそくとの関係も報告されています。肺炎クラミジアはヒトからヒトに咳でまき散らされた飛沫で経気道的に伝播し、呼吸器疾患を起こします。肺炎の症状としては、潜伏期を経て徐々に発症し、38℃以上の高熱が出ることは多くありませんが、乾性咳嗽(かわいた咳)が特徴と言われ、遷延する激しい咳を呈することも多くあります。高齢者では重症化する場合もあります。しかし、特異的な臨床所見に乏しいので症状だけから診断することは難しく、診断には咽頭ぬぐい液を染色してクラミジアが作る封入体(下の図)を見つけたり、血中の特異的抗体を検出したり、PCRという遺伝子増幅する方法で肺炎クラミジアと確定します。

肺炎クラミジアへの抗体保有率は小児期から急増して成人では約60%以上と高率で、高い割合の方が同菌に感染した既往があることを示しています。この抗体には感染を防止する作用はなく、何度でも感染、発症します。また高い割合で咽頭など局所に持続感染しているとの報告もあります。胸部レントゲン写真では異型肺炎(陰影が特殊)として診断され治療されることが多いですが、治療には、マクロライド系,テトラサイクリン系の抗生物質を医師の指示に従い10日~2週間ほど内服しますが、一般の細菌と違いよく処方されるペニシリン系やセフェム系の抗菌薬は効果が少ないので注意が必要です。

ワクチンなど特別な予防法はありませんが、発症した場合にはマスクを着用するなどして小児、老人や抵抗力の低い方にうつらないよう注意しましょう。

白井 陸訓(山口大学 医学部ゲノム機能分子解析学分野)

◆封入体
一部の微生物では感染した宿主の細胞内に増殖した微生物の塊として顕微鏡でみられることがある。クラミジアでは細胞質内に核よりもずっと大きな菌塊を形成し、封入体膜をもち、ひとつの封入体には5,000個程度の菌体があるとされます。
肺炎クラミジアの封入体