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日本細菌学会
Japanese Society for Bacteriology

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ミクロの世界からのメッセージ
講師:野田 公俊(のだ まさとし)
日本細菌学会元理事長/千葉大学名誉教授

はじめに

 この講演は大学生や博士をめざす大学院生、さらには専門領域の科学者が扱うような最新のテーマを話題に取り上げていますが、小中高生に興味を持っていただけるような構成にしており、だれでも簡単に理解する事が出来るようにしています。パワーポイントを使用したこの60分~90分の講演を最後まで聞くと、日常生活で役立つ多くの「正しい知識を簡単に身につける」事が出来ます。また、「自然界の不思議さ・魅力」、さらには「他者との協調の重要性」にも気付いてくれると確信しています。

 他人を理解し心豊かな日常生活をおくれるように、また将来、多くの分野で優秀な世界的リーダーが多数登場するように、私たちは心から若い皆さんを支援していきたいと思っています。

ミクロの世界からのメッセージ

 私たちの住む地球上には、人間の肉眼では見る事の出来ない微細な「ミクロの世界」というものが存在しています。そこには微生物という小さな生き物が住んでいます。微生物には細菌・ウイルス・酵母・カビなどを含めて実に多くの種類があります。電子顕微鏡でやっと彼等の姿を見る事が出来るようになったものもあります。

 これらの微生物は常に私たちの住む世界に様々なメッセージを送って来ています。私たち人間は、そのメッセージを上手に利用して、彼等との共同作業で豊かな日常生活を築き上げて来ました。たとえば、チーズやヨーグルト、ビール・ワイン・日本酒などのお酒類、味噌・醤油・酢などの調味料、納豆やパン、さらには抗生物質という薬なども微生物の協力でやっと出来上がるものです。私たちの祖先は、太古から微生物との付合いが大変上手だったようです。そして今日の豊かな文化を形成することが出来ました。

 しかし、このミクロの世界からのメッセージに正しく対応しないと、私たちは想像を絶する脅威を受ける事が有ります。つまり、人間をはじめ動物や植物などの生命が脅かされ、ついには奪われてしまう事も多く有ります。皆さんも知っているO-157という殺人細菌が引き起こした食中毒事件もその代表例です。

 1996年に我が国の至る所で、O-157の集団食中毒事件が勃発し、実に10,000人もの被害者が出ました。命を失った人も12名出てしまいました。多くは体力の弱い小さな子どもと高齢者の方でした。いったいミクロの世界で何が起きているのでしょうか?

 これを理解する為には、日本だけではなく、地球的規模でミクロの世界を調査してみなければなりません。その結果、大変ショッキングな事がわかりました。全世界で1年間の内に微生物が引き起こす「感染症」という病気で命を失った人の数が、約20,000,000人に達するというのです。これは、大都市東京に住む人口のほぼ2倍に相当します。

 つまり、1年間にこの地球上から東京規模の大都市が感染症によって、確実に2つは消え去るという大変悲惨な事実を示していたからです。

 高度な最新の医療が有る現代社会が築かれたにもかかわらず、なぜこのような悲惨な事件が私たちの住む地球上で起きているのでしょうか?

 実はその理由は、大きく3つに分類される事がわかって来ました。当講演ではこれらをわかりやすく解説します。また、それらはなぜ起きて来たのか?それらへの正しい対処はどのようにすれば良いのかなども解説します。

野田 公俊
野田 公俊(のだ まさとし)
日本細菌学会元理事長
千葉大学名誉教授

 現在、「子供達の理科離れ防止の教育講演」を全国的に展開。この講演活動で2008年度文部科学大臣表彰「科学技術賞(理解増進部門)」を受賞。
 また、日米医学協力研究会コレラ専門部会員で国際交流も積極的に進めている。コレラ毒素やO-157のベロ毒素、ピロリ菌の空胞化致死毒素など、多くの細菌毒素を無毒化する各種天然物質の研究を進めており、感染症に対する21世紀の新しい戦略として注目を集めている。

講師略歴

1951年4月19日生まれ。青森県出身。
青森県八戸市立長者中学校、青森県立八戸高等学校、東北大学を経て、

1983年3月 東京大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士号を取得。
1983年4月 東京大学医科学研究所 細菌感染研究部・助手。
1984年7月 日本細菌学会黒屋奨学賞受賞。
1985年9月~
1988年6月
アメリカ合衆国国立衛生研究所(NIH)に留学。客員研究員。
1988年7月 千葉大学医学部微生物学第二講座・助教授。
1990年11月 同上・教授。
1998年11月~
2000年11月
千葉大学・学長補佐 兼任。
2001年4月 千葉大学大学院医学研究院・病原分子制御学(現 病原細菌制御学)・教授
(組織替で名称変更)
2006年8月 日本学術会議連携会員(兼任)
2007年4月 千葉大学大学院副医学研究院長
2008年4月 文部科学大臣表彰「科学技術賞(理解増進部門)」受賞
2009年1月 日本細菌学会理事長
2009年5月 記念文化褒章受賞(八戸市市制施行80周年)
2009年12月 デーリー東北賞受賞
2013年3月 日本細菌学会浅川賞受賞
2013年9月 日本学術振興会 ひらめき☆ときめきサイエンス推進賞受賞
2015年11月 オオケン学術社会貢献賞受賞
現在に至る。
2016年 千葉大学大学院医学研究院定年退官。千葉大学名誉教授。